CRAとは臨床開発モニターと言われる職種を訳したものであり、一言でいえば、医療現場において治験が適切に行なわれているかどうか、試験プロセスをチェックする審査官のような役割を担う職業です。
治験プロジェクトにおいて、不祥事や不手際による治験者への悪影響を予防するために、リスク、ミスをあらかじめ予防する、あるいはトラブルが発生した時に迅速に対処するというのが、主な役割となります。
CRAは医療従事者でありながら、医療現場を管理する職業です。それゆえ、患者と接していくというよりも、医療従事者との関わりが多くなりますが、通常の医療従事者とは異なる立ち位置にいることを理解しておくと、職業の特徴が掴みやすくなります。
CRAの主な役割
予め設定された手順通りに、治験が円滑に進められるように、治験の調整、書類手続等を請け負うのが、CRAです。具体的には、医療機関、医療従事者の治験に対する適性を判断、不適切な環境、人材を取り除くことで、治験を実行するにふさわしい環境を整えていきます。
同時に、治験審査委員会（IRB）の構成委員や開催要件に関する調査も行います。治験審査委員会は、治験参加者の人権と安全性に問題がないかどうかを審査するために、GCP省令において設置が義務づけられている専門機関ですが、IRBの運営に不備が見つかると、その治験における症例全てが使用出来なる可能性があります。
IRBが適切に運営されているかどうかというのは、治験において、非常に重要な要素となるので、その審査を担当するCRAの責任は大きなものとなります。実際、CRAの業務内容のなかでも、最も重視されており、他の業務以上に、慎重さが求められることになります。
医療従事者全てが治験に慣れているわけではない
CRAの業務に取り組むうえで、忘れてはならないのは、医療従事者のすべてが治験に慣れているわけではないということです。それゆえにCRAによる適切な環境、人材のチェック、調査が大きな意味を持ってきます。
たとえば、治験プロジェクトにおいて、発生する問題例の1つに、薬の服用の仕方を間違えるというものがあります。このようなことが起こると治験はスムーズに進行しなくなりますが、モニターに対して、医療従事者が事前に策定された治験実施計画から外れた服用を指示してしまうことが原因です。
医療従事者の理解不足が背景にあり、上記のようなことが起こらないように、医療従事者に対して、治験薬に関する説明をしっかり行うことがCRAの役割となります。（そのためには、わかりやすい資料をまとめられるだけの専門知識や文書作成スキルも必須となっていきます。）
人間関係の構築もCRAとしては非常に重要
CRAの業務をまとめていくと、治験に伴う、調査・調整・管理・説明ということになりますが、これらを円滑に行なっていくためには、医療従事者と適切にコミュニケーションを取っていくことが必要になります。
コミュニケーションに支障が起きると、CRAとしての業務そのものが成立しないことすらあります。挨拶の仕方、メールの仕方、医療機関への訪問回数、説明のわかりやすさ等、コミュニケーションが関係してくる要素は無限にあります。
専門知識だけでは対応出来ないところが、CRAという仕事です。ある意味では、人間力が問われる仕事であり、難易度は高くなりますが、それだけに大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。（年収という実入りも大きなものとなります。）
被験者の安全、データの信頼性もCRAにかかってきている
CRAが直接被験者と接していくことは殆どありませんが、被験者が安全に治験を受けられるための環境作りには直接関与することになります。被験者の資料を揃えていく、CRAによる被験者選出を適切に行なっていくことで被験者が負うリスクを最小限に抑えることが出来ます。
また、データの信頼性を担保するというのも、CRAとしての重要な役割となります。治験データの信頼性というのは、症例報告書等のデータが正確に入力されているかどうかにかかってきますが、医療従事者のスキル不足で、正確なデータが入手出来ないということもあります。
その時には、必要なデータを適切に揃えられるように、指導・サポートを行うことが、CRAには求められることになります。また、時には非協力的な姿勢を取る医療従事者もいますが、そういった人間に対しても、うまくコミュニケーションを取って、やるべきことをやらせるといった人材マネジメントが必須となってきます。
このように、治験が上手くいくかどうかというのはCRAにかかっていると言っても過言ではありません。それだけ求められる能力も多く、責任が大きな仕事となります。それだけに、得られる経験、知識は非常に価値あるものとなり、その経験を活かして、キャリアを広げていくことが出来ます。
調剤薬剤師というポジションから、飛躍したいという人にとっては、やり甲斐を持って取り組める仕事です。興味がある人は、是非、CRAという業務に挑戦してみてください。
